■作品名:時雨(しぐれ)
■作  者:宇田荻邨(うだ てきそん)

本名、宇田善次郎。明治29年(1896)三重県松阪市生れ。

 小学校高等科在籍中の明治44年(1911)、15歳の善次郎は絵画に関心を示しはじめ、72葉におよぶ『図画帖』を描きあげ、基礎的な習画にいそしんだ。

 高等科を卒業し三重県度会郡二見町在住の中村左洲、女流画家伊藤小坡に入門して手習いに励んだ。このころの作品は、師匠が得意とした魚類の写生であるが、「平治物語絵巻」の「六波羅行幸巻」を模写したものがある。その出来ばえはすでに習画の初期段階を経てかなり達者な描筆を身に付けていたといえる。

 この模写図を描筆した翌年、菊池芳文(1862−1918)に入門することで本格的な歩みがはじまり、善次郎の進む方向が定まったといえる。善次郎が「荻村」(のち荻邨に改号)の号を使いはじめたものこのころのことである。

 しかし翌年、師の勧めもあって、京都市立絵画専門学校別科に入る。入学の年から毎年文展に出品していたが、落選続きであった。

 様々な苦難の後、1937年(昭和12)、荻邨40歳のときに初めて個展を開くことができた。この時出品された18点の作品の中の1点がこの「しぐれ」があり、それらの作品は荻邨の過去10年の歩みと研究の集大成といえるものであった。

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